近代日本の批評―昭和篇〔下〕
1997-11-10
講談社
柄谷行人
戦後の批評は、はたして「戦争」の後の批評たりえただろうか。……「戦争」の前の批評たりえただろうか。(柄谷行人「あとがき」)
従来の戦後という認識を、昭和中期・昭和後期として、新たな視点から批評史を分析。敗戦から高度成長期を経て戦後体制の終焉までの文学と思想の歴史を徹底的に検討。浅田彰、柄谷行人、蓮實重彦、三浦雅士による共同討議第2弾。1945年から1989年にわたる批評史略年表を付す。
1 戦後批評ノート 三浦雅士
2 《討議》 昭和批評の諸問題 1945-1965 浅田彰・柄谷行人・蓮實重彦・三浦雅士
戦後批評とマルクス主義幻想
中村光夫の不幸な輝き
他者体験としての戦後体験
ジャンルとしての文学の崩壊
『経哲草稿』=疎外論の出現
文学の不可能性の露呈と三島由紀夫
極限状況の不在、終わることの不可能性
江藤淳の文体論とニュークリティシズム
自己疎外=表出・表現論
花田=吉本論争の意味、無意味
上部構造論と「疎外論」批判
ディレッタンティズムと自明性としての文学
フロイトとユング
戦争体験の内面化と"大衆"
3 現代批評史ノート 浅田彰
4 《討議》 昭和批評の諸問題 1965-1989 浅田彰・柄谷行人・蓮實重彦・三浦雅士
「六八年」を用意した思想
イマジナリーな空間の破砕
ポスト構造主義と通底する思考
表層的な記号の海へ
共同的なアイデンティティと疎外の回復
祝祭=革命
日本とフランスにおける「六八年」
ブルジョアの登場と祝祭の終わり
大江健三郎と山口昌男
「内向の世代」
秋山駿からの刺激
「第三の道」とシンボルの没落
鎖国状態と「意味」の変容
「輸入」と同時性
「表層と深層」「中心と周縁」
世界構造の欠落と第三世界
債権国家の消費社会
八〇年代の空白と反動
情報の飽和・関心の自足
小説と植民地、階級闘争
緊張感の喪失と文学
批評とは何か、批評史とは何か?
昭和批評史・略年表
人名索引
あとがき