終戦のローレライ〈1〉 (講談社文庫)
2005
講談社
福井晴敏
1。
昭和二十年、日本が滅亡に瀕していた夏。崩壊したナチスドイツからもたらされた戦利潜水艦·伊507が、男たちの、国家の運命をねじ曲げてゆく。五島列島沖に沈む特殊兵器·ローレライとはなにか。終戦という歴史の分岐点を駆け抜けた魂の記録が、この国の現在を問い直す。第22回吉川英治文学新人賞受賞。
2。
この国に「あるべき終戦の形」をもたらすと言われる特殊兵器·ローレライを求めて出航した伊507。回収任務に抜擢された少年兵·折笠征人は、太平洋の魔女と恐れられたローレライの実像を知る。米軍潜水艦との息詰る死闘のさなか、深海に響き渡る魔女の歌声がもたらすのは生か死か。命の凱歌、緊迫の第2巻。
3。
その日、広島は核の業火に包まれた。人類史上類を見ない大量殺戮の閃光が、日本に定められた敗北の道を歩ませ、「国家としての切腹」を目論む浅倉大佐の計画を加速させる。彼が望む「あるべき終戦の形」とは?その凄惨な真実が語られる時、伊507乗員たちは言葉を失い、そして決断を迫られた。刮目の第3巻。
4。
「ローレライは、あなたが望む終戦のためには歌わない」あらゆる絶望と悲憤を乗り越え、伊507は最後の戦闘へ赴く。第三の原子爆弾投下を阻止せよ。孤立無援の状況下、乗員たちはその一戦にすべてを賭けた。そこに守るべき未来があると信じて。今、くり返す混迷の時代に捧げる「終戦」の祈り。畢生の大作、完結。
1968年東京都生まれ。私立千葉商科大学中退。’98年『Twelve Y.O.』で第44回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。’99年刊行の『亡国のイージス』で第2回大薮春彦賞、第18回日本冒険小説協会大賞、第53回日本推理作家協会賞をトリプル受賞した。また『終戦のローレライ』で第24回吉川英治文学新人賞、第21回日本冒険小説協会大賞を受賞。