アルベルティ

2012-9-15  

白水社  

Anthony Grafton  

足達 薫,石澤 靖典,佐々木千佳,森 雅彦  

レオン・バッティスタ・アルベルティ(1404-72)は、イタリア・ルネサンスを代表する建築家、芸術理論家、人文主義者として名高い。『絵画論』、『建築論』、『家族論』をはじめ、数学、法学、神学に関する著作も数多く、「万能人」の原型とされている。
アルベルティ研究は、1998年に「国際アルベルティ学会」が創立され、近年ふたたび盛んになっている。そのアルベルティ研究の実態は、各専門分野に細分化されているのだが、著者アンソニー・グラフトンは歴史家らしく、重要な研究文献を押さえたうえで、1430年代のアイデンティティの寓意的研究から、晩年の建築・都市計画にいたる巨匠の多様な段階を、総合的に、わかりやすい語り口で巧みに論じている。
そして万能人アルベルティの歩みを「イタリア都市世界の変容」の特徴と見なし、とくに人文主義や視覚芸術の先端の展開を反映したものとして捉えているところが特色である。
また本書のもう一つの大きな特徴は、アルベルティのテクストを広範に活用しながら、その声に耳を傾け、巨匠の業績全般にわたってバランスよく描いている点である。いわば知の巨人の「知的」伝記といえる。

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