中華帝国の構造と世界経済
1994-2
名古屋大学出版会
黒田 明伸
市場経済の自由な発展が見られた中国が、なぜ世界経済の中枢になれなかったのか? 中華帝国のダイナミズムを支えてきた構造を、現地通貨と地域間決済通貨の概念をテコに析出し、非均衡型市場経済モデルを提示する。
序 二つの貨幣
前編 中華帝国の昇華を世界経済の始動
一章 銀銭二貨制
一 小額通貨の時代
二 銀銭二貨の属性と機能
二章 撰銭から銭貴へ-乾隆通宝の登場-
一 日常としての撰銭
二 乾隆の銭貴
三 制銭流通の崩壊
四 小結 -ムガールと清
三章 穀賎から米貴へ-地域資産への傾斜-
一 穀賎から米貴
二 穀賎現地備蓄の形成
三 制度としての穀物備蓄
四 地域資産過高評価の構造
五 穀物備蓄のその後
四章 雑種幣制と本位貨幣制
一 無本位制下の銀流通
二 雑種幣制の構造
五章 中華帝国と重商主義
一 銀・穀物・小額通貨
二 東アジアと世界経済
三 現地通貨と地域権力
四 財政と市場
後編 世界経済の展開と中華帝国の溶解
六章 辛亥革命への視角
七章 清末湖北省における幣制改革-広域経済圏への道-
一 悪弊インフレ論の虚構
二 第一次幣制改革-国産銀元の失敗
三 千九〇三年の通貨危機
四 第二次幣制改革-銅元・官銭票の普及
五 貨幣の通用状況
六 貨幣循環の変容
七 貿易ならびに物価への影響
八 小結
八章 清末湖北省政府の財政改革-中国分省化の選択肢-
一 辛亥革命論と財政
二 湖北省財政の規模と歳入構成
三 一九〇二年以前-財政保守主義との相克
四 一九〇二年以後-省財政膨張と自律化傾向
五 中央統制と省財政の危機
六 省財政と州県行政
七 漢口開港場経済と省権力
八 小結
九章 世界経済と辛亥革命
一 国際金本位制と第一次産品貿易
二 ドイツ油脂化学工業とアジア小農経済
三 開港場経済の競合
四 光緒新政と分省化
五 小結-現地通貨の退場と世界経済の転機
十章 銀銭二貨制の終焉-分省化の回避-
一 幣制統一への道
二 袁世凱銀元の普及
三 中国銀行券の普及過程
四 漢口銅貨圏の崩壊
五 小結
十一章 綿糸綿花流通にみる中国市場構造の特質
一 逆説的市場現象
二 綿糸市場の地域分割と原綿流通
三 決済構造と綿糸・綿花流通
四 中国紡績業の「黄金期」と原綿需給
五 小結
結 二つの債権
