宋代沿海地域社会史研究
2012-5-28
汲古書院
岡元司
无
【刊行の辞】より
本書は、2009年10月に急逝された岡元司先生の遺稿集である。同年11月、総勢200人余を集めた「岡 元司先生を偲ぶ会」の席上にて、本書編集の発起がなされ、満場の賛意で迎えられた。それから約2年半、 多くの方々からの資金的・学術的援助を得、三回忌をすぎてようやくその刊行は現実のものとなった。
本書全21章を通観すれば、生前の先生がどれほど精力的に研究に邁進されていたか、改めて実感することができよう。病に罹られた後も、先生は所謂「にんぷろ」の指揮を執る総括班の一員の役割を担い、江南に台北に或いはアメリカにと飛び回っておられた。御逝去直前の先生が広島大学の同僚に宛てたメールには「ちょっとお腹が張っているので、病院で水を抜いてきます」とあった。あくまで生きることにこだわり、研究にこだわる最期であった。その先生の研究の全体像が本書を通してようやく公になったことは、生かされた者のこの上なき喜びである。親しみやすい人柄と幅広い交遊で知られた先生には、多くの年若い研究者が勇気づけられ、また、様々に機会を与えられてきた。すでに先生は天上の人となったが、本書が今後はよすがとなり後進を励ますであろうことを信じている。(「岡元司先生遺稿集」 編集委員会・実行委員会)
口 絵
刊行の辞
第1部:地域社会史研究と方法論
第1章 地域社会史研究
第2章 宋代の地域社会と知――学際的視点からみた課題――
第3章 宋代地域社会史研究と空間・コミュニケーション
第2部:エリートの活動と地域社会
第4章 南宋期における科挙――試官の分析を中心に――
第5章 南宋期温州の名族と科挙
第6章 南宋期温州の地方行政をめぐる人的結合――永嘉学派との関連を中心に――
第7章 南宋期の地域社会における知の能力の形成と家庭環境――水心文集墓誌銘の分析から――
第8章 南宋期の地域社会における「友」
第9章 南宋期温州の思想家と日常空間――東南沿海社会における地域文化の多層性――
第10章 南宋期浙東における墓と地域社会――対岸社会の一断面――
第11章 宋代明州の史氏一族と東銭湖墓群
第12章 宋代における沿海周縁県の文化的成長――温州平陽県を事例として――
第3部:基層社会の変容と信仰――地域社会から東アジア海域まで――
第13章 沿海地域社会を歩く――南宋時代温州の地域文化が育まれた空間――
附録 宋元時代の浙東沿海地域社会とマニ教
第14章 疫病多発地帯としての南宋期両浙路――環境・医療・信仰と日宋交流――
第15章 中世日本における疫病・信仰と宋文化――“海の道”がつなぐ東アジア――
第16章 海をとりまく日常性の構造
第4部:地域社会と環境
第17章 南宋期浙東海港都市の停滞と森林環境
第18章 周防から明州へ――木材はなぜ運ばれたか――
第19章 中国の森林環境を考える旅
第20章 地中海と東アジア海域の環境に関する覚書
第21章 環境問題の歴史からみた中国社会――森林・伝染病・食文化――
岡元司略歴・業績目録/後序1(山根直生)・後序2(寺地 遵)/あとがき/索 引
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