白土三平伝 カムイ伝の真実
2011-7-1
小学館
毛利 甚八
白土三平が生涯をかけてカムイ伝を書く理由
コミック界の巨人・白土三平の本格評伝。いままでほとんど伝えられることのなかった白土三平の真の素顔に迫ったノンフィクションでもある。白土三平はファシズムと闘う左翼画家・岡本唐貴の子として生まれ、軍国教育のもとで多感な思春期を過ごし、疎開先で「アカの子」としての差別と飢えの苦しみを体験する。その中で紡いだ、「画家になりたい」という志を戦後の混乱期の中でも一貫して持ち続け、紙芝居作家から貸本漫画家、そしてコミック作家として独り立ちしていく。『忍者武芸帳』の大ヒットで世を騒がし、『サスケ』『カムイ』と時代性に満ちた斬新なキャラクターを次々に生み出し、自由な表現をもとめて月刊漫画誌『ガロ』を創刊。やがて、売れっ子漫画家として驚異的な生産力を発揮する中で体を病み、房総の小さな漁師町に沈潜する沈黙の時代を経て、カムイ伝第二部で、再び世に出ます。
この本は白土三平という稀代のコミック作家の創作の秘密、その暮らしぶり、思想の原点にまで踏み込んで描ききった、毛利甚八氏入魂の著書です。
【編集担当からのおすすめ情報】
この企画は、15年あまりにわたって白土三平に寄り添いながらその仕事ぶりに直に触れてきたノンフィクション作家でコミック原作者でもある毛利甚八氏の手による白土三平の評伝です。その作品を高く評価されながら、長い間マスコミにまったく登場しない「謎の漫画家」として、ある種伝説を持って語られてきた白土三平の肉声がふんだんにちりばめられた貴重な記録でもあります。『カムイ伝』という物語の全体はあまりにも長く、第二次安保闘争から石油ショック、円高不況、バブル期をまたがって描き継がれたために、『カムイ伝』全部を読み通して価値をはかることのできる読者そのものが少なくなっている中、そのサブテキストの必要性は増しています。事実、2008年秋に刊行された田中優子・著『カムイ伝講義』は、超ロングセラーを続けています。カムイ伝をあるいは白土三平を読み解く際の解説書して、この本は大変に貴重なものだと考えています。カムイ伝をいまいちど読んでみよう、あるいはこれから読もうと考えている人に、ぜひ手にとって欲しい本に仕上がっています。