探偵ガリレオ
2002-2-10
文藝春秋
東野圭吾
无
文春文庫(ISBN:4167110075)
発刊日 2002/02/10
Detail 内容:燃える(もえる)/ 転写る(うつる)/ 壊死る(くさる)/ 爆ぜる(はぜる)/ 離脱る(ぬける)
文庫の解説はガリレオのモデルである佐野史郎さん
お薦め度 ☆☆☆☆
お気に入り指数 ☆☆☆☆
著者は、『探偵ガリレオ』を上梓した際に以下のような言葉を残しています。
自分の持っている理系の知識を駆使して小説を書いてみたいと思っていた。それを実行したのが本作品。登場してくる科学知識はすべて既存のものだが、一般の人には馴染みが少ないだろう。
理論的には可能だが、実行可能かどうかは検証していない。当たり前である。検証するには人を殺さねばならない。
文系の人には意味不明なところも多いだろうし、理系の人間だって、自分の専門外のところはよくわからないかもしれない。それでもストーリーを楽しめるように書いたつもりである。
作者の狙い通りの作品集と言えるでしょう。確かに、理解不能な箇所が数多く存在しますが、展開の面白さに魅せられて、楽しく読み進める事ができます。文系の人には、「少し利口になった気がする」という、望外のおまけも付いて来ます。
燃える(もえる)
オートバイの爆音と嬌声で周辺住民の不興を買っていた若者の1人が焼死した。事態の顛末を見ていた仲間は、「あいつの後ろの髪の毛から急に火が出た」と話している。一部のマスコミはプラズマとよるものと推理したが…。
湯川学が解決した最初の事件です。この時点では、まだ「ガリレオ」というニックネームは生まれていません。
加害者への同情を余儀なくされる作品なので、ガリレオ先生の活躍が嬉しくもあり悲しくもある、と言ったところでしょうか。
転写る(うつる)
中学校の文化祭で展示されていた石膏像は、出展者が、池で見つけた金属性のデスマスクを元に作られたものであった。後日、その池からは、行方不明となっていた歯科医の遺体も発見される。デスマスクは歯科医のものと判明したが、それがいかにして作られたかは不明のままだった。
アルミ片・黒い皮膜に覆われた電気コード・長さ1メートルほどの軽量鉄骨の存在から、湯川学は、デスマスク製造の謎を解き明かします。結末部で飛び出す科学者の冗談も興味深いところ―。
壊死る(くさる)
スーパーマーケットを経営する男の遺体が、自宅の浴室内から発見された。男の右胸には直径10㎝程度の痣に似た痕があり、解剖の結果、その痕は、皮膚が壊死したために出来たものだと判明する。
この章に登場する「殺人トリック」は、前二章に較べればやや馴染み深いと思えるものが登場します。科学には無縁な人間にでも実行できそうにも思えます。模倣犯が登場しませんように…。
爆ぜる(はぜる)
神奈川の海水浴場で、轟音と共に原因不明の火柱が立ち登り、遊びに来ていた主婦が死亡する。その火柱は、見ていた者の目には、海中から突き出るように姿を現した、と映った。
科学者はこんな事もできてしまうのかと、身がすくむ思いを余儀なくされる物語です。事件の背景には、高速増殖炉「もんじゅ」で起ったトラブルが関連する事があるせいか、短編とは思えない重厚感が漂う作品になっています。
離脱る(ぬける)
化粧品メーカーに勤めるOLが自宅で殺害され、彼女と交際のあった保険の外交員に嫌疑が掛かるが、その外交員のアリバイを証明する人間が現れた。小学二年生の少年が、「幽体離脱」によって、外交員の車を認識したという。少年の父親がマスコミに情報提供したために、ちょっとした騒動へと発展するが―。
ガリレオというニックネームは、この章で初めて登場します。名付け親は草薙刑事の上司である間宮警部で、難事件解決のための助言を授けてくれる湯川に対し、敬意をこめて「ガリレオ先生」と呼びました。
この章でも、幽体離脱を思わせる怪現象の謎を、ガリレオ先生こと湯川学が鮮やかに解き明かします。子供ぎらいを標榜する湯川の身に起る怪現象も見ものです。
1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学工学部卒業。エンジニアとして勤務しながら、85年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年『秘密』で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木賞を受賞
(「BOOK著者紹介情報」より)
无