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ユイスマンスとオカルティズム

大野英士 新評論
出版时间:

2010/3/1  

出版社:

新評論  

作者:

大野英士  

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无  

内容概要

デカダンスを代表する異端の作家の「回心」を軸に、世紀末の知の大変動・西欧文明の負の歴史を読み解く
1884年、まだ自然主義全盛のフランスに世にも不思議な小説『さかしま』をひっさげて登場したジョリス=カルル・ユイスマンス。きらびやかな筆致で、毒々しい人工の花園を咲かせた、あの革命的なユイスマンス。そのユイスマンスが、1895五年の作品『出発』を機にカトリックに回心し、宗教的なリゴリズム(厳粛主義)にこりかたまった「神秘主義作家」に転身する。何故、このあり得ない逆転が可能になったのか?
その背景にはJ=A・ブーラン神父という奇怪な人物との出会いがあった。
ヨーロッパ世界は、大革命に伴い神を抹殺した。その結果、左派=共和派も、右派=カトリック・王党派もこぞってオカルティズムに転落してしまう。華々しい科学の進展も、合理性・合目的性を追求していると見えながら、「神の死」をファンタスムの次元で隠そうという意図にもとづくオカルト信仰‐死者崇拝に支えられていた。しかし、オカルトに転落したのはカトリシズムも同様だ。聖母マリアの出現という社会現象は、大革命後の象徴的な審級の失墜から生じた心霊現象なのだ。
ユイスマンスは西欧文明が首までどっぷりつかっている「否定性」を、イメージやメタファーという文学のレベルで賦活し、自己の欲望を組み替えてみせる。そしてこの過程でユイマンスは、聖母出現の周囲に蠢く異端の教祖ブーランの教説、特に動物磁気・催眠術・心霊術などと密接な関係をもつ「流体」説や、特異な精霊=聖母マリア崇拝を自己の文学に取り込んでいくのだ。
神という表象はその過程で、否定性の一つの関数としてテクスト的に成立したようにみえる。しかし、このようにして成立した神は、同じ否定性の運動によって抹消されているかも知れないのだ。
世紀末とは死と憂愁にとらわれた病的な時代であるかに見える。だが実は、大規模な知の組み換えが生じていた時代でもある。この書物は、エロスと暗黒、その両者を孕んだおぞましくも耽美な世界が開示してくれる驚きに満ちた知的冒険への招待状だ。
明治の日本が最初に出会った西欧とは、まさに科学の勝利が叫ばれる風潮の陰で、悪魔やオカルト、心霊現象、神秘主義といった怪異に立ち騒ぐ世紀末デカダンスの西欧だった。現在のホラー・ブームやゴス・カルチャーの隆盛をはじめ、西欧文明の負の歴史を読み解く鍵がいま読者の前に開かれる。(おおの・ひでし)

作者简介

著者-大野英士(おおの・ひでし)
1956年生まれ。
早稲田大学他非常勤講師。
フランス文学、現代思想専攻。
共編著『増補ネオリベ現代生活批判序説』、主訳書F.-X.ヴェルシャヴ『フランサフリック─アフリカを食いものにするフランス』(高橋武智との共訳、緑風出版、2003)など。異端芸術をテーマにする雑誌『トーキングヘッズ(TH)』に定期的に寄稿中。


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