欲望の修辞学
1996-06
青土社
多木浩二
无
権力装置・性的幻想そして生活術にと、〈欲望〉は際限なく肥大する。〈快楽〉という名の病に憑かれた１８世紀フランスの宮廷文化。その猥雑・無骨な〈欲望〉が、美的洗練と畸形化の共存するさまに、時代の気分が奇妙に符合する現代を透視する。〈見えない権力〉として、社会に遍在する〈欲望〉に、混沌とした文化の源泉を探る全く斬新な文化論。
目次
-
「花」 のざわめき
——奇妙な情熱
——具体の世界
——イデオロギーの歴史
——コードの交換あるいは生命
-
刈られた木
——庭園の植物
——体系としての自然
——視覚の愉しみ
——庭園の政治学
——触覚のたのしみ
-
隠れたイメージ
——アナモルフォーズ
——遠近法の意味が変わった
——隠し絵の政治学
——隠し絵からアナグラムへ
-
道化の階段(ナレントレッペ)
——城の階段
——芸能者たちの記念碑
——壁画の構造
——裏のルネッサンス
-
グロテスクな 「甥」
——グロテスクの復権
——比喩としての世界
——修辞機械
——パントマイム
-
かつらの呪力
——シミュラクルの文化
——かつらの流行
——演劇的身体
——かつらの呪力
-
玉座と便器
——家と汚物
——汚れのまわりの物
——華麗な便器
——玉座になった便器
-
「布」 のコスモス
——絵のなかの 「布」
——部屋の快楽
——「布」 の軌跡
——「布」 の記憶
-
寄木細工の哲学
——家具職人の時代
——精密さの哲学
——花とアラベスク
——欲望あるいは世界の所有
——構造から表面へ
-
「趣味」 の商人
——建築家と家具商人
——商業の空間
——家具商人のビジネス
——商業と美的生産
——快楽という病
-
愛の小部屋(ブドワール)
——私的な快楽の空間
——欲望の季節
——ブドワールの画家
——女の部屋の政治学
-
家族の肖像
——私的な感情の絆
——視線の交錯
——寓意から換喩へ
——オイディプスの場
-
註
あとがき
新版のためのあとがき
多木浩二（たき・こうじ）
１９２８年、神戸市生まれ。東京大学文学部卒業。評論家。建築・絵画・デザイン・写真などの広汎な領域に、現代思想の最新成果を駆使して、斬新でオリジナルな批評活動を展開。著書 ： 『眼の隠喩』 『生きられた家』 『ものの詩学』 『モダニズムの神話』 『比喩としての世界』 『天皇の肖像』 『絵で見るフランス革命』 他。
无